烏兎匆匆(うとそうそう)

日々の暮らしや趣味(音楽、旅行、俳句)など、わたしの日常を綴っていきたいと思います。

車内置き忘れの巻

先日、先輩からのご紹介でまだ一度もお会いしたことがない女性カメラマンに、ビジネス用の写真撮影をお願いしました。

撮影当日、カンカン照りのお日様の下、スーツのジャケットやメイク道具などをエコバックに入れ、会場に向かう途中、乗り換えの駅のひとつ前の駅で降りてしまう私。暑さボケかなあ、まあでも、このひとつ前の駅で乗り換えても約束の時間には間に合うと、苦笑しながら歩いていると、何かもやもやするものが。

もやもやの元をたどっていくと、左手に持っているべきエコバックがないことに気付く。なんてこった。そうだった、重かったので網棚に置いたのだった。その荷物が左手に無いのです。

まあだけど、どの列車に乗ったかはっきりしているし、その列車がどのあたりを走行しているかもわかるわけだし、しかも今日はどの車両のどの網棚に置いたかも私ははっきりと言える。なので、この駅から列車の車掌さんか途中駅の係の人に電話してもらい、たとえば三つ先の駅でその荷物を降ろしてもらい、私はその駅に取りに行けば良いのではないか。そうすれば、約束の時間に少し遅れるとは思うが、一番スマートに解決できそうだ。

早速話の分かる人を探しに駅改札に向かい、事情を説明しました。しかし、「走行中の列車で遺失物の捜索はしないんです」と固い感じの返事が返ってきました。この駅の構内のお忘れもの事務室(?のような名前の場所)に行ってください、と二度も言われました(話のわからないおばさんと思われたのでしょうか)。この問題は簡単には解決できないかもしれないなぁと気づき、カメラマンさんにメッセージを送って事情を説明しました。「撮影は今日で大丈夫ですか?時間は問題ないのでゆっくりでも大丈夫です」というような感じで言ってくださり、お忘れもの事務室へ向かいました。

しかし、その事務室の入口には「ただいま席を外しております。お忘れ物センターへ電話してください」という貼り紙が。ここはやはり担当者と直接話したいと思い、数分事務室前で待ってみたのですが誰も戻ってきません。しかたなく、看板のとおりに電話をかけました。

私:もしもし、車内の網棚に忘れ物をしたのですが

JRさん:何時にどこからどこまで乗りましたか?

私:△時△分〇〇駅発、□□駅まで乗りました

JRさん:忘れたものは何ですか?

私:紺色に白い花柄のエコバッグです

JRさん:中身は何ですか?

私:紺のジャケット、白のジャケット、ワンピース、ノートと本、サドルカバーです

JRさん:本のタイトルわかりますか?

私:はっきりわからないのですが、弁護士が教えるだったか弁護士が知るべきSNSとかなんとかって本です

JRさん:今お調べしますので、少々おまちください

しばらくして、電話のJRさんが言う

JRさん:まだ端末上に情報はありません。その列車はまだ走行中なので、終着駅に付く11時頃にまた電話してみてください。

そうなのか。10時の約束で11時にジャケットがあるかないかもわからないなんて、もうエコバックを頼りにすべきではない。そうだ、ジャケットを買おう。いや、夏のスーツを持っておらず買わないといけないので、夏スーツを買おう。スタヂオ途中の乗り換えターミナル駅ビルでスーツを購入してから向かうことにしました。

10時きっかりに駅ビルに飛び込み、手軽な値段のレディスアパレルメーカーのブティックで男性店員さんを独り占めにして試着して、色の薄いのと濃いののスーツと着替え用のブラウスも購入しました。事情を知った店員さんは

「え、え、え、そんなことあったんですか?そ、それで、大丈夫ですか?」

とびっくりしたように言うので

「だって、ないものをくよくよ考えてもしょうがないじゃないですか。夏スーツを買わないといけなかったし、娘の夏休みも始まっていつ買いに行くか、時間を作るのも難しくなるし、今日なら写真撮影もスーツ購入もできるなら、一石二鳥。しかもバーゲン中のこのお店があってラッキーでした!」

と答えたら

「メンタル強いっすねぇ、僕なら相当落ち込んでますよー」

と褒めてくれました。

手際良く買い物をしたつもりでしたが、試着までしたので結局約束の時間より1時間程度遅れてしまいました。でも、カメラマンの方はこちらの気持ちを大切にしてくださり、「たいへんでしたね」などと労ってくださったのでした。そして、お直し用のメイク道具で私の顔を整え、ヘアスタイルをアイロンで整えてくださり、ゆっくりしたテンポで撮影の世界に引き込んでいってくれました。あんな失敗をし、お待たせもしてしまったのにとてもリラックスした気持ちで参加することができました。撮影中の雑談も楽しいものでした。

3時間の約束だったのですが1時間遅れたので、2時間後にそろそろ終わりましょうとお伝えしたら、1時間後ろにずれただけと考えてますので、あと1時間ありますよ、大丈夫ですよ、と。なぜあのとき網棚に目をやらなかったのか、心から悔やみました。

すべて終わって帰り道。その間にもまた「お忘れ物センター」に電話をしてみましたが、上の、私とJRさんのやり取りと全く同じ展開になりました(何人も担当がいるらしく、毎回変わる)。

私:もしもし、車内の網棚に忘れ物をしたのですが

JRさん:何時にどこからどこまで乗りましたか?

(以下やり取り同じ。ただし、最後のセリフが違う)

JRさん:まだ端末上に情報はありません。折り返しの列車に乗ったままか、どこかの駅で回収されたけれど情報が入力されていないのかもしれません。しばらくしてまた電話してみてください。

もうあきらめて、自宅近くの駅まで帰ってきました。最後まであきらめづらかったのは、自転車置き場の鍵です。市営の自転車置き場に入場するとき切符が出てくるのですが、この切符がないと余計なお金が取られます。

待てよ。こんなに落とし物情報がないならば、もしかすると電車にまだ乗っているのかもしれない。

私は朝乗った電車を調べ、終着駅から折り返すとした場合の次の終着駅を調べ、さらに折り返すとした場合の終着駅を調べました。そうすると、今から15分後に今居る駅をその電車が通ります。

最後の望みでその電車を待ってみることにしました。15分あったので、まずホーム売店で買った遅いランチのサンドイッチをベンチで齧り、すぐ発車すると思ったのでちゃんと朝乗った車両の位置に立って待ちました。

果たして、列車がきて、あるべき場所に私のエコバックは・・・ありませんでした。あったらすごい偶然。あるはずないかーとちょっと残念な気持ちに。

そして、またホームのベンチに座って「お忘れ物センター」に電話をしてみましたが、上の、私とJRさんのやり取りと全く同じ展開になりました(何人も担当がいるらしく、毎回変わる)。

(ただし、最後のセリフが違う)

JRさん:あ、それらしいものがありますね。今××駅です。どうされますか?着払いか直接取りに来られるか。着払いなら、どこか駅に行って手続きが必要です。

見つかった、良かった。自転車の鍵は間に合わないけれど、メイク道具も、二、三日はメイクなしになるかもしれないが、とりあえず良かった!ただ、xx駅に行くには往復運賃が3千円もかかる。

私:着払いにします。ありがとうございます!

ホームにいた私はその駅の改札脇の駅員さんに声をかけ、書類の手続きをしてもらい、身分証明書を見せて、すっきりとした気分で駅を後にしました。

駐輪場は100円ですが、鍵(切符)がないので1000円取られました。勉強代です。

さて、配送は二、三日かかると言われていたのですが、翌朝の8時50分にピンポンが鳴り、ゆうぱっくで届きました。本当に速い。ありがたい。

カメラマンさんの臨機応変の対応と、xx駅の速い発送に感謝した思い出となりました。xx駅にお礼の電話をかけたら、つながったのは昨日の「お忘れ物センター」でした。事情を話したらxx駅に伝言してくれるということでした。

皆様にご迷惑をおかけしてすみませんでした。